日本舞踊家尾上紫のリサイタル大成功
2024.12.08
日本舞踊
尾上 紫
日本舞踊家の尾上紫が11月26日午後3時と同6時半の二回、東京・渋谷のセルリアンタワー能楽堂でリサイタル「花」を開いた。これが迎えて七回目のリサイタルだったが、興奮を覚えるほどの熱演ぶりだった。
彼女が披露したのは清元「熊野(ゆや)」と長唄「娘道成寺」の二曲。「熊野」は平宗盛が愛した熊野との別れの回想を描く。一方、「娘道成寺」は安珍・清姫伝説に素材を取った作品。共に舞踊では良く披露される、舞踊ファンならほぼ誰でも知っている演目だ。
中でも私が瞠目したのは「娘道成寺」。ある面、感情表現を上手く出すのが難しい踊りでもあるが、尾上はテンポも良く、女性の情念をいかんなく感じさせだ。その迫力は見ている者をも圧倒した。固唾を飲むとはこのことかと思わせる力の入った踊りだった。
踊り終わると、観客席から大きな拍手が巻き起こったのも納得できる名演だった。
元々、尾上はこれまで数々の舞踊賞を受賞した実力派であったが、今後のさらなる活躍を期待させるリサイタルだった。