変化舞踊と私

2017.10.10

日本舞踊

花ノ本海花ノ本 海

   変化舞踊と私の出会いは大学3年生の授業でした。
変化舞踊とは日本舞踊の中でも歌舞伎をルーツにもつ作品群の中の、かなりを占めるジャンルで、元々は一人の演者が色々な役柄に変化していく形で上演されていた舞踊です。

   現在は基本的に一曲ずつ独立して上演され、私も小さい頃から何曲か踊らせて頂きましたが、それが変化舞踊の一部であることを知ったのがその授業でした。
とくに流行したのは江戸後期の文化文政時代。当時の絵番付を見ると、今持っている演目に対するイメージが変わることもあります。
例えば「玉兎」はお伽噺の可愛らしい踊りで定着していますが、元々はシャレで鉢巻を兎の耳みたく結んだ威勢の良い、物売りの役です。
「保名」も、現行とは違い素襖に長袴で病鉢巻をしていない絵がありますが、確かに〽️素襖袴の~という歌詞が出てきて、当時の扮装を残しています。

   また人気役者が競って変化舞踊を上演した事で次々と名曲が生まれました。
三代目三津五郎丈が「汐汲」などを含む七変化を踊り、その歌詞にライバル三代目歌右衛門丈をからかう箇所がありました。それに対抗して歌右衛門は一夜で「越後獅子」を含む七変化舞踊を作って上演。そちらの方が評判良く、当時の歌舞伎はロングラン形式で、50日も続いたと伝えられています。

   このようにして現在も上演される演目が成立したこと、またそれらは当時の風俗を今に伝える意味もあり、そのあたりにロマン・魅力を感じ、私も二曲ずつではありますが変化舞踊を上演させて頂いております。

◯月雪花名残文台
            浅妻船→玉兎
◯拙筆力七以呂波
            傾城→供奴
◯花翫暦色所八景
            年増→佃船頭
◯哥へす哥へす余波大津絵
            藤娘→船頭

   以上四回やらせて頂きましたが自分のこだわりとしては、必ず初演時にセットで踊られた曲の中から二曲をつなげるということです。
また、その中からなるべく対照的なニ役を踊るということです。
また、このように演目を並べてみると現在よく上演されるものばかり、いかに変化舞踊の流行が歌舞伎舞踊の発展に深く関わっているかわかります。

   今後も、変化舞踊をリスペクトしつつ上演して行きたいと思います。

花ノ本 海

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著者情報 / Author info

真壁聖一 Makabe Seiichi

1946年 宮城県仙台市生まれ。東北福祉大学卒業。中日新聞東京本社(東京新聞)で、一般芸能、伝統芸能を担当する。2017年3月退社後、フリージャーナリストへ。舞踊批評家協会員。